信用保証協会経営力強化保証制度
データ収集日時: 2025年6月13日
信用保証協会経営力強化保証制度
データ収集日時: 2025年6月13日
概要
信用保証協会の経営力強化保証制度は、中小企業・小規模事業者の「経営力強化」を図るための保証制度で、認定経営革新等支援機関（認定支援機関）の支援を受けることで、通常より大幅に有利な保証条件を受けられる「隠れた超優遇制度」です。多くの中小企業が認定支援機関の存在や制度の詳細を知らないため、情報格差が極めて高く、活用すれば保証料率の大幅削減や保証限度額の拡大が可能な高コスパ制度です。
なぜ情報格差が極めて高いのか
1. 認定支援機関制度の認知度不足
- 制度の複雑性: 認定支援機関を経由する必要があることを知らない
- 支援機関の存在: 税理士・会計士・コンサルタントの中でも認定支援機関を知らない
- 活用方法: 認定支援機関をどう活用すべきかが不明
- メリットの不明確: 通常保証との違い・メリットが分からない
2. 金融機関からの情報提供不足
- 一般保証優先: 手続きが簡単な一般保証を優先して案内
- 認知不足: 金融機関担当者も制度詳細を知らない場合が多い
- 手間の回避: 認定支援機関との調整が面倒で避ける傾向
- 情報の整理不足: 類似制度が多く、最適制度の案内ができない
3. 認定支援機関側の課題
- 営業不足: 積極的な制度PR・営業活動が不足
- 情報発信: ウェブサイト・パンフレット等での情報発信が弱い
- 連携不足: 金融機関・保証協会との連携が不十分
- 成功事例: 制度活用の成功事例・効果の共有が少ない
費用対効果が極めて高い理由
1. 保証料率の大幅削減
通常保証との比較:
- 通常保証料率: 0.45%～1.90%
- 経営力強化保証料率: 0.2%～1.35%（約0.2～0.5%削減）
- 削減効果: 年間保証料を20～30%削減可能
具体例（5,000万円・5年保証の場合）:
- 通常保証: 年間約50万円
- 経営力強化保証: 年間約35万円
- 削減額: 年間約15万円（5年間で約75万円削減）
2. 保証限度額の拡大
- 通常保証限度額: 2億8,000万円
- 経営力強化保証限度額: 2億8,000万円 + 別枠2億8,000万円 = 最大5億6,000万円
- 拡大効果: 保証枠が実質倍増
3. 柔軟な保証条件
- 据置期間: 通常より長期の据置期間設定可能
- 返済条件: より柔軟な返済条件設定
- 審査: 経営改善計画に基づく将来性重視の審査
- 継続支援: 認定支援機関による継続的な経営支援
4. 認定支援機関の支援価値
- 経営改善計画策定: 通常50～100万円相当の支援を格安で受けられる
- 継続支援: モニタリング・フォローアップ支援
- 専門性: 各分野の専門家による高品質な支援
- ネットワーク: 認定支援機関のネットワーク活用
対象者・要件
1. 基本要件
対象企業
- 中小企業者: 中小企業基本法に定める中小企業者
- 小規模事業者: 従業員20人以下（商業・サービス業は5人以下）
- 個人事業主: 要件を満たす個人事業主も対象
- 業種: ほぼ全業種対象（一部除外業種あり）
認定支援機関要件
- 認定支援機関の関与: 認定経営革新等支援機関の支援を受けること
- 経営改善計画: 認定支援機関と共同で経営改善計画を策定
- 継続支援: 計画実行について継続的な支援を受けること
- モニタリング: 定期的な進捗確認・指導を受けること
2. 認定経営革新等支援機関とは
認定機関の種類
- 税理士・税理士法人: 税務・会計の専門家
- 公認会計士・監査法人: 財務・会計の専門家
- 中小企業診断士: 経営の専門家
- 弁護士・弁護士法人: 法務の専門家
- 金融機関: 銀行・信金・信組・政府系金融機関
- 商工会議所・商工会: 地域の経営支援機関
- その他: コンサルティング会社・ITベンダー等
認定機関の選び方
- 専門分野: 自社の課題・業種に精通した機関
- 実績: 経営改善計画策定・支援の豊富な実績
- 地域性: 地域事情を理解した地元の機関
- 相性: 経営者との相性・信頼関係
3. 経営改善計画の要件
計画内容
- 現状分析: 経営・財務・事業の現状分析
- 課題整理: 経営課題の整理・優先順位づけ
- 改善策: 具体的で実現可能な改善策
- 数値目標: 売上・利益・財務指標等の数値目標
計画期間
- 原則5年以内: 計画期間は5年以内
- 年度別計画: 各年度の具体的な計画・目標
- 中間見直し: 必要に応じた計画の見直し・修正
保証内容・条件
1. 保証限度額・期間
保証限度額
- 基本枠: 2億8,000万円（通常保証と同額）
- 別枠設定: 経営力強化保証として別枠2億8,000万円
- 合計限度: 最大5億6,000万円まで保証可能
- 段階的利用: 成長に応じた段階的な保証利用
保証期間
- 運転資金: 7年以内（据置1年以内）
- 設備資金: 10年以内（据置2年以内）
- 長期資金: 一定条件下で15年まで延長可能
- 据置期間: 通常より長期の据置期間設定可能
2. 保証料率・負担軽減
保証料率
会計参与・会計専門家関与の場合:
- 0.2%割引: 保証料率から0.2%割引
- 例: 通常1.15% → 0.95%
経営改善計画の場合:
- 0.1%割引: 追加で0.1%割引
- 例: 0.95% → 0.85%
その他割引:
- 若手経営者: 0.1%割引（35歳未満）
- 知的財産権: 0.1%割引（特許等保有）
- 創業: 0.1%割引（創業5年未満）
総合割引効果
- 最大割引: 0.4%程度の割引可能
- 削減効果: 年間保証料を20～30%削減
- 長期メリット: 保証期間全体での大幅コスト削減
3. 資金使途・審査
資金使途
- 運転資金: 仕入・人件費・経費・季節資金等
- 設備資金: 機械・装置・車両・店舗・工場等
- 借換資金: 既往債務の借換・一本化
- 新事業資金: 新規事業・事業拡大・多角化
審査特徴
- 将来性重視: 経営改善計画に基づく将来性重視の審査
- 専門家支援: 認定支援機関の支援による信頼性向上
- 継続性: 継続的な支援体制による安心感
- 柔軟性: 個別事情を考慮した柔軟な審査
活用事例と効果
1. 製造業（従業員25名・精密部品製造）
経営課題
- 売上減少・赤字継続
- 設備老朽化・生産性低下
- 技術力不足・品質問題
- 資金繰り悪化
支援内容
認定支援機関: 中小企業診断士事務所
計画策定期間: 3か月
計画内容: 設備近代化・技術改善・販路開拓・財務改善
保証活用
- 保証額: 8,000万円（設備資金6,000万円・運転資金2,000万円）
- 保証料率: 0.85%（通常1.25%から0.4%削減）
- 年間削減額: 約32万円（保証料削減）
成果（2年後）
- 売上回復: 前年比40%増
- 利益改善: 営業利益率8%達成（従来-3%）
- 生産性向上: 1人当たり売上高50%向上
- 財務改善: 自己資本比率20%→35%に改善
- 総合効果: 年間約2,000万円の収益改善
2. 小売業（従業員8名・食品スーパー）
経営課題
- 大型店との競争激化
- 客数・客単価減少
- 店舗老朽化
- 後継者問題
支援内容
認定支援機関: 地域金融機関（認定支援機関）
計画策定期間: 2か月
計画内容: 店舗リニューアル・商品構成見直し・サービス向上・事業承継
保証活用
- 保証額: 3,000万円（設備資金2,500万円・運転資金500万円）
- 保証料率: 0.75%（通常1.15%から0.4%削減）
- 年間削減額: 約12万円（保証料削減）
成果（18か月後）
- 売上増加: 前年比25%増
- 利益改善: 営業利益率12%達成（従来5%）
- 客数増加: 1日平均客数30%増
- 承継準備: 後継者への段階的承継開始
- 総合効果: 年間約800万円の収益改善
3. サービス業（従業員12名・介護事業）
経営課題
- 人材不足・離職率高
- 利用者満足度低下
- 法改正対応の遅れ
- 新サービス展開の必要
支援内容
認定支援機関: 税理士法人（認定支援機関）
計画策定期間: 4か月
計画内容: 人事制度改革・サービス品質向上・IT化・新サービス開発
保証活用
- 保証額: 5,000万円（設備資金3,000万円・運転資金2,000万円）
- 保証料率: 0.90%（通常1.35%から0.45%削減）
- 年間削減額: 約22万円（保証料削減）
成果（2年後）
- 売上拡大: 前年比60%増
- 利益改善: 営業利益率15%達成（従来8%）
- 離職率改善: 離職率45%→15%に大幅改善
- 満足度向上: 利用者満足度85%達成
- 総合効果: 年間約1,500万円の収益改善
4. 建設業（従業員18名・建築工事）
経営課題
- 受注単価下落
- 人材不足・高齢化
- 安全管理の問題
- デジタル化の遅れ
支援内容
認定支援機関: 商工会議所（認定支援機関）
計画策定期間: 3か月
計画内容: 高付加価値工事への転換・人材育成・安全管理・IT導入
保証活用
- 保証額: 1億2,000万円（設備資金8,000万円・運転資金4,000万円）
- 保証料率: 0.80%（通常1.20%から0.4%削減）
- 年間削減額: 約48万円（保証料削減）
成果（30か月後）
- 受注改善: 高付加価値工事の受注拡大
- 利益改善: 営業利益率10%達成（従来4%）
- 人材確保: 若手技術者5名採用・定着
- 安全性向上: 労災事故ゼロ達成
- 総合効果: 年間約3,000万円の収益改善
5. 情報サービス業（従業員15名・システム開発）
経営課題
- 技術者不足・スキル不足
- プロジェクト管理の問題
- 新技術対応の遅れ
- 顧客満足度低下
支援内容
認定支援機関: ITコンサルティング会社（認定支援機関）
計画策定期間: 2か月
計画内容: 人材育成・プロジェクト管理改善・新技術導入・品質向上
保証活用
- 保証額: 6,000万円（設備資金4,000万円・運転資金2,000万円）
- 保証料率: 0.70%（通常1.05%から0.35%削減）
- 年間削減額: 約21万円（保証料削減）
成果（18か月後）
- 売上拡大: 前年比80%増
- 利益改善: 営業利益率20%達成（従来12%）
- プロジェクト成功率: 95%達成（従来75%）
- 顧客満足度: 90%達成（従来65%）
- 総合効果: 年間約2,500万円の収益改善
申請手続き・流れ
1. 事前準備
認定支援機関の選定・相談
- 機関の検索: 中小企業庁のサイトで認定支援機関を検索
- 初回相談: 経営課題・支援ニーズの相談
- 支援契約: 経営改善計画策定支援の契約締結
- 役割分担: 企業と認定支援機関の役割分担確認
現状分析・課題整理
- 財務分析: 過去3年間の財務データ分析
- 事業分析: 事業内容・市場環境・競合状況分析
- 組織分析: 組織・人材・業務プロセス分析
- 課題整理: 経営課題の整理・優先順位づけ
2. 経営改善計画策定
計画策定プロセス
- 現状認識: 企業と認定支援機関での現状認識共有
- 目標設定: 3～5年後の目標・ビジョン設定
- 戦略策定: 目標達成のための基本戦略策定
- 行動計画: 具体的な行動計画・スケジュール策定
- 数値計画: 売上・利益・財務指標等の数値計画
計画書の内容
- 現状分析: 経営環境・財務状況・事業状況の分析
- 課題・問題点: 経営課題・改善すべき問題点
- 改善方針: 課題解決・改善のための基本方針
- 具体的施策: 改善のための具体的施策・取組
- 数値目標: 年度別の売上・利益・財務目標
- 資金計画: 設備投資・運転資金の計画
- 実施体制: 計画実行のための体制・役割分担
- モニタリング: 進捗管理・効果測定の方法
3. 保証申込・審査
金融機関での申込
- 金融機関選定: 取引金融機関または新規開拓金融機関
- 事前相談: 融資・保証申込の事前相談
- 申込書作成: 融資申込書・保証委託申込書の作成
- 書類提出: 必要書類一式の提出
必要書類
- 融資申込書: 金融機関所定の融資申込書
- 保証委託申込書: 信用保証協会所定の申込書
- 経営改善計画書: 認定支援機関と策定した計画書
- 財務諸表: 直近3期分の決算書・確定申告書
- 試算表: 最新の試算表・資金繰り表
- 商業登記簿: 法人の場合の登記事項証明書
- 認定支援機関確認書: 認定支援機関による確認書
- その他: 見積書・カタログ・許認可書等
審査・保証決定
- 金融機関審査: 金融機関による融資審査
- 保証協会審査: 信用保証協会による保証審査
- 面談・調査: 必要に応じた面談・現地調査
- 保証決定: 保証承諾・条件提示
- 融資実行: 金融機関による融資実行
4. 事後フォロー・モニタリング
継続支援体制
- 定期面談: 認定支援機関との定期面談（月1回～四半期1回）
- 進捗確認: 経営改善計画の進捗確認・分析
- 課題対応: 新たな課題・問題への対応策検討
- 計画修正: 必要に応じた計画の見直し・修正
効果測定・評価
- 数値分析: 売上・利益・財務指標の分析・評価
- 取組評価: 各種改善施策の実施状況・効果評価
- 目標達成度: 計画目標の達成度評価・分析
- 改善提案: さらなる改善・発展のための提案
他制度との併用・連携
1. 補助金制度との併用
- ものづくり補助金: 設備投資と併せた活用
- IT導入補助金: システム導入と併せた活用
- 事業再構築補助金: 事業転換と併せた活用
- 小規模事業者持続化補助金: 販路開拓と併せた活用
2. 税制優遇との併用
- 中小企業投資促進税制: 設備投資減税との併用
- 研究開発税制: 技術開発投資との併用
- 事業承継税制: 事業承継計画との併用
- 固定資産税軽減: 設備投資に伴う軽減措置
3. 他の金融支援制度
- 日本政策金融公庫: 政府系金融機関との協調融資
- 商工中金: 系統金融機関との連携
- 自治体制度融資: 地方自治体の融資制度との併用
- ファンド: 成長資金・再生資金との組合せ
今後の展望・戦略的活用
1. デジタル化・DX推進資金
- システム導入: 基幹システム・クラウドシステム
- 自動化設備: 生産自動化・業務自動化
- データ活用: BI・AI・IoT関連投資
- セキュリティ: サイバーセキュリティ強化
2. 脱炭素・ESG対応資金
- 省エネ設備: 高効率設備・再生可能エネルギー
- 環境対応: 環境負荷軽減・リサイクル設備
- ESG経営: 持続可能な経営体制構築
- 認証取得: 環境・品質・安全認証取得
3. 事業承継・M&A資金
- 承継準備: 後継者育成・体制整備
- 株式譲渡: 株式取得・経営権移譲
- M&A: 企業買収・統合・分社
- 成長資金: 承継後の成長投資
4. 新事業・イノベーション資金
- 研究開発: 新技術・新商品開発
- 新規事業: 新分野進出・多角化
- 海外展開: 輸出・現地進出・技術移転
- スタートアップ: 新規事業立上げ・ベンチャー投資
注意点・リスク管理
1. 認定支援機関選定の重要性
- 専門性: 業界・課題に精通した機関選定
- 実績: 豊富な支援実績・成功事例
- 相性: 経営者との相性・信頼関係
- 継続性: 長期的な支援体制・関係
2. 計画策定の質
- 現実性: 実現可能で具体的な計画
- 客観性: 客観的分析に基づく計画
- 柔軟性: 環境変化に対応できる計画
- 実効性: 実行可能な具体的施策
3. 継続的な取組
- 実行力: 計画を確実に実行する体制・意志
- モニタリング: 定期的な進捗確認・改善
- コミュニケーション: 認定支援機関との密接な連携
- 改善継続: 継続的な改善・発展への取組
問い合わせ先
全国信用保証協会連合会
業務企画部
- 電話: 03-3271-7201
- 受付時間: 9:00～17:00（土日祝日を除く）
- 住所: 〒100-0006 千代田区有楽町1-10-1
各都道府県信用保証協会
- 51協会: 全国47都道府県+4市に設置
- 相談窓口: 各協会で経営力強化保証の相談対応
- 認定支援機関紹介: 地域の認定支援機関紹介
中小企業庁
経営支援部経営支援課
- 電話: 03-3501-1511（代表）
- 認定支援機関検索: 中小企業庁ウェブサイト
- 制度問合せ: 経営力強化保証制度の問合せ
関連リンク