厚生労働省キャリアアップ助成金
データ収集日時: 2025年6月13日
厚生労働省キャリアアップ助成金
データ収集日時: 2025年6月13日
概要
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。非正規雇用労働者の雇用安定と処遇改善を図り、働きがいのある人間らしい仕事（ディーセント・ワーク）の実現を目指します。
対象者
基本要件
以下のすべてを満たす事業主：
-
雇用保険適用事業所の事業主
-
キャリアアップ管理者の配置
-
有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む者を配置
-
キャリアアップ計画の作成・届出
-
計画期間（3年以上5年以内）を定めて管轄労働局に提出
-
労働関係法令の遵守
- 雇用保険料を滞納していないこと
- 労働関係法令違反がないこと
対象労働者
以下のいずれかに該当する労働者：
- 有期雇用労働者
-
期間の定めのある労働契約を締結している労働者
-
無期雇用労働者
-
期間の定めのない労働契約を締結している労働者（正規雇用労働者を除く）
-
派遣労働者
- 派遣元事業主に雇用される労働者
対象外事業主
- 不正受給から5年を経過していない事業主
- 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主
- 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業、その他これらに類する事業を行う事業主
助成コース・内容
1. 正社員化コース
対象となる転換・直接雇用
- 有期→正規: 有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換
- 有期→無期: 有期雇用労働者を無期雇用労働者に転換
- 無期→正規: 無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換
- 派遣→正規: 派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用
- 派遣→無期: 派遣労働者を無期雇用労働者として直接雇用
支給要件
- 雇用期間: 転換前に6か月以上雇用
- 転換後継続雇用: 6か月以上継続雇用
- 賃金アップ: 転換後の基本給を3%以上増額
助成額
1人当たり助成額
- 有期→正規: 57万円（中小企業）、42万7,500円（大企業）
- 有期→無期: 28万5,000円（中小企業）、21万3,750円（大企業）
- 無期→正規: 28万5,000円（中小企業）、21万3,750円（大企業）
加算措置
- 派遣労働者の直接雇用: 28万5,000円加算
- 母子家庭の母等: 9万5,000円加算
- 父子家庭の父: 9万5,000円加算
- 人材開発支援助成金との併用: 9万5,000円加算
2. 障害者正社員化コース
対象労働者
- 重度身体障害者: 身体障害者手帳1・2級
- 重度知的障害者: 療育手帳A（地域により1・2度）
- 精神障害者: 精神障害者保健福祉手帳保持者
- その他: 発達障害者・難病患者等
支給要件
- 雇用期間: 転換前に6か月以上雇用
- 転換後継続雇用: 1年以上継続雇用
- 労働時間: 週20時間以上の労働
助成額
- 重度身体・知的障害者: 120万円（中小企業）、90万円（大企業）
- 重度以外身体・知的、精神障害者: 90万円（中小企業）、67万5,000円（大企業）
3. 賃金規定等改定コース
対象となる取組
- 基本給の改定: 賃金規定等を増額改定
- 諸手当の新設・拡充: 各種手当の新設・改善
- 賞与・退職金制度: 新たな制度の導入
支給要件
- 改定率: 2%以上の増額改定
- 対象労働者: すべての有期雇用労働者等の賃金を改定
- 実施時期: キャリアアップ計画期間内
助成額
全員2%以上増額の場合
- 中小企業: 1人当たり3万2,000円
- 大企業: 1人当たり2万1,000円
- 上限人数: 100人
一部3%以上、2%未満は除外の場合
- 中小企業: 1人当たり2万8,500円
- 大企業: 1人当たり1万9,000円
4. 賃金規定等共通化コース
対象となる取組
正規雇用労働者と共通の賃金規定等を新たに規定・適用
支給要件
- 共通化: 正規雇用労働者と同一の賃金規定等を適用
- 対象労働者: 2人以上の有期雇用労働者等に適用
- 継続適用: 6か月以上継続適用
助成額
- 中小企業: 1事業所当たり57万円
- 大企業: 1事業所当たり42万7,500円
- 加算: 対象労働者1人当たり2万円（上限20人）
5. 賞与・退職金制度導入コース
対象となる制度
- 賞与制度: 有期雇用労働者等を対象とした賞与制度
- 退職金制度: 有期雇用労働者等を対象とした退職金制度
支給要件
- 新規導入: 制度を新たに導入
- 対象労働者: 2人以上の有期雇用労働者等に適用
- 継続適用: 6か月以上継続適用
助成額
- 賞与制度: 38万円（中小企業）、28万5,000円（大企業）
- 退職金制度: 38万円（中小企業）、28万5,000円（大企業）
- 同時導入: 76万円（中小企業）、57万円（大企業）
6. 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
対象となる取組
社会保険の適用拡大の際の基本給増額
支給要件
- 適用拡大: 社会保険の任意適用を行う
- 処遇改善: 基本給を増額改定
- 増額率: 2%以上または3%以上の増額
助成額
- 中小企業: 1人当たり1万9,000円（2%以上）、2万9,000円（3%以上）
- 大企業: 1人当たり1万4,250円（2%以上）、2万1,750円（3%以上）
- 上限人数: 45人
7. 短時間労働者労働時間延長コース
対象となる取組
短時間労働者の週所定労働時間を延長
支給要件
- 労働時間延長: 週所定労働時間を3時間以上延長、または1時間以上3時間未満延長し、社会保険を適用
- 継続雇用: 6か月以上継続雇用
- 処遇改善: 延長時間に応じた基本給の増額
助成額
- 3時間以上延長: 22万5,000円（中小企業）、16万9,000円（大企業）
- 1時間以上3時間未満延長: 4万5,000円（中小企業）、3万3,000円（大企業）
申請手続き
キャリアアップ計画の作成・提出
作成手順
- キャリアアップ管理者の選任
- 対象労働者の現状分析
- 目標設定とスケジュール策定
- 具体的取組内容の決定
提出時期
- 原則: 取組実施日の前日まで
- 変更: 内容変更時は事前に変更届を提出
支給申請手続き
申請時期
- 取組実施後: 支給要件を満たした日の翌日から2か月以内
申請書類
- 支給申請書
- 添付書類: 労働契約書、賃金台帳、出勤簿等
- 支給要件確認書類: 転換・処遇改善を証明する書類
申請先
活用事例
事例1：小売業の正社員化（従業員50名）
取組内容: パート従業員10名を正社員に転換
助成金: 570万円（57万円×10名）
効果: 離職率低下、サービス品質向上、採用コスト削減
事例2：製造業の処遇改善（従業員80名）
取組内容: 有期雇用労働者30名の基本給3%アップ
助成金: 85万5,000円（2万8,500円×30名）
効果: モチベーション向上、生産性向上、人材定着
事例3：サービス業の制度導入（従業員30名）
取組内容: 賞与・退職金制度を有期雇用労働者15名に適用
助成金: 106万円（制度導入76万円+対象者加算30万円）
効果: 優秀人材確保、企業イメージ向上、離職率半減
事例4：IT企業の労働時間延長（従業員40名）
取組内容: 短時間労働者5名の労働時間を25時間→30時間に延長
助成金: 112万5,000円（22万5,000円×5名）
効果: 社会保険適用、収入増加、働きがい向上
事例5：建設業の障害者正社員化（従業員60名）
取組内容: 知的障害者2名を有期雇用から正社員に転換
助成金: 180万円（90万円×2名）
効果: 法定雇用率達成、職場活性化、CSR向上
制度活用のポイント
計画的な取組
- キャリアアップ計画: 具体的で実現可能な計画策定
- 段階的実施: 無理のないペースでの制度導入
- 継続的改善: PDCAサイクルによる継続的な処遇改善
労働者との合意形成
- 説明・相談: 制度の目的・内容の十分な説明
- 意向確認: 労働者の希望・適性の確認
- 研修・指導: 正社員化に向けた能力開発支援
他制度との連携
- 人材開発支援助成金: 職業訓練との併用で加算措置
- 両立支援等助成金: 育児・介護支援との併用
- 地方自治体制度: 都道府県・市町村の独自制度との併用
継続的な効果確保
- 定着支援: 転換後のフォローアップ・相談体制
- キャリア開発: 更なるスキルアップ・昇進機会の提供
- 職場環境: 働きやすい職場環境の整備・改善
注意事項
- 支給要件の確実な充足
- 転換・処遇改善の適正な実施
- 継続雇用・賃金増額の確実な履行
-
必要書類の適切な保管・管理
-
労働関係法令の遵守
- 労働基準法・労働契約法の遵守
- 雇用保険・社会保険の適正加入
-
最低賃金法・同一労働同一賃金の遵守
-
不正受給の防止
- 虚偽申請・書類偽造の禁止
- 実態の伴わない形式的転換の禁止
-
適正な労務管理・記録保持
-
変更届・報告義務
- 計画変更時の事前届出
- 支給決定後の状況報告
- 調査・検査への協力
よくある質問
Q1: 試用期間中の労働者も対象になるか？
A1: 試用期間中であっても、有期雇用労働者等の要件を満たせば対象となります。
Q2: 同一労働者を複数回転換できるか？
A2: 同一労働者の同一転換は1回限りですが、段階的転換（有期→無期→正規）は可能です。
Q3: 転換後に退職した場合の助成金は？
A3: 支給要件期間（6か月）内に退職した場合は、助成金は支給されません。
Q4: 複数の助成金制度との併用は可能か？
A4: 同一労働者・同一目的での重複受給は不可ですが、異なる目的であれば併用可能な場合があります。
問い合わせ先
厚生労働省職業安定局
雇用開発企画課
- 電話: 03-5253-1111（代表）
- 受付時間: 9:30～18:15（土日祝日を除く）
都道府県労働局
職業安定部 職業対策課
- 各都道府県労働局の職業対策課
- キャリアアップ助成金担当窓口
ハローワーク
- 事業所所在地を管轄するハローワーク
- 雇用関係助成金窓口
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
雇用支援部
- 電話: 043-213-6000
- 障害者雇用関連の相談・支援
関連リンク